日本鉄バイオサイエンス学会

第48回:大会長挨拶

第48回日本鉄バイオサイエンス学会学術集会開催に際して

大会長挨拶

このたび、2024年8月30日(金)・31日(土)に、京都大学医学部 芝蘭会館にて、第48回日本鉄バイオサイエンス学会学術集会を開催させていただくことになりました。

鉄は赤血球の酸素運搬に関わっており、鉄欠乏が貧血の原因となることはよく知られています。鉄の役割は広汎で、エネルギー産生、DNA合成にも関わっており、鉄は私たちも含めほぼ全ての生物に必須である微量金属です。一方で、過剰な鉄は毒性を持っています。

例えば、鉄はC型肝炎ウイルスによる肝炎を増悪して肝癌発症に導きますし、古くから老化との関連も示唆されてきました。また近年、鉄がトリガーとなる細胞死であるフェロトーシスが癌、神経変性疾患などとの関連から注目を集めています。

それゆえ、体内の鉄代謝・動態、適切な鉄の摂取量の理解は、近年注目されている健康寿命の延伸に寄与するところが大きく、従来から注目されてきた鉄欠乏、鉄毒性の研究成果を踏まえつつ、栄養学の観点からも鉄の包括的な研究を推進することが不可欠です。

さらに、鉄は植物、病原微生物などにとっても必須の微量金属ですから、人類社会の健全な発展を踏まえれば食糧増産や疾病予防などの観点からも、ヒトに限らず広汎なレベルでの生物と鉄の研究の推進も求められています。

そのような状況を踏まえ、従来から本学会が積極的に取り組んできたヒトにおける鉄の必要性、鉄毒性は本学術集会でもメインテーマとして取り上げつつ、栄養の観点や植物など幅広い生命における鉄の役割などに関しても議論できればと考えております。

2023年10月
第48回日本鉄バイオサイエンス学会学術集会
会長 岩井 一宏
(京都大学理事・副学長、大学院医学研究科教授)

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