日本鉄バイオサイエンス学会

第49回:大会長挨拶

第49回日本鉄バイオサイエンス学会学術集会開催に際して

大会長挨拶

このたび、2025 年 9月 6 日(土)および7日(日)の2日間にわたり、北海道札幌市のニューオータニイン札幌(札幌市中央区)にて、第 49 回日本鉄バイオサイエンス学会学術集会を開催させていただくことになりました。

鉄は我々の身体に必要不可欠な金属元素です。鉄は、多くの役割を担っていますが、鉄が不足して起こる鉄欠乏性貧血は、日常診療で最も遭遇する頻度の高い病態の一つで、貧血全体の約7割を占めており、世界的にも最重要の課題です。もちろん、古くから注目され、栄養学的な対策の必要性も指摘されておりますが、若年女性における鉄欠乏は本邦で特に問題であり、現在でも十分に改善されていません。一方、鉄不足を補う各種の鉄剤は、古くから使用されているものが多く変化がない時代が続きましたが、近年は経口鉄剤、静注鉄剤、ともに新規の製剤が本邦でも使用可能となり、臨床現場ではより適切かつ確実な鉄補充が行える選択肢が増えており、適切な使用については、今後も深く議論を継続していく必要がございます。

一方、鉄過剰症に目を向けてみますと、長期間にわたる赤血球輸血に起因することは近年多くの臨床医に認識され、鉄キレート剤による治療も広く行われておりますが、全ての症例で適切に行われているかと考えると、決して十分ではない部分もあります。加えて、長期間の赤血球輸血が必要な血液疾患にも新規治療法が出てきており、輸血依存性にも変化が生じる可能性があり、注目されます。さらに、赤血球製剤は献血から作られていますが、献血者の側に注目すると、実は鉄欠乏に傾いている場合もあり、今後対策が必要なことも分かってきました。私事で恐縮ですが、現在は血液製剤を製造する側におりますため、本会では、これまで深く取り上げられてこなかった、献血や輸血医療と鉄代謝、にもfocusを当てて議論したいと考えております。

2024年9月

第 49 回日本鉄バイオサイエンス学会学術集会
会長 生田 克哉
北海道赤十字血液センター事業推進統括部長
兼 日本赤十字社血液事業本部技術部主幹

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