代表世話人 挨拶 2009

日本鉄バイオサイエンス学会は、「生命と鉄」に関連する研究の進歩、発展を図ることを目的として設立された学術団体で、鉄代謝研究会を母体とし、より広く人、動物、植物、細菌、無機科学などの学際的な分野での研究者の参加をえて発足しました。国際的にも、2007年の第2回国際バイオ鉄学会総会(BioIron2007 Kyoto)を京都国際会議場で日本学術会議と共催するとともに、翌年には東京でそのフォローアップシンポジウムを行いました。また、国民への鉄と健康に関して公開講座を始めとした啓蒙活動を積極的に進めています。

本学会は、鉄欠乏性貧血鉄過剰症などの臨床的課題から生体鉄に関する基礎的研究に関し、生化学、分子生物学、物理化学、生理学、微生物学などの医学領域、栄養学のみならず薬学、農獣医学など広い分野の医師、研究者が参加し、生命と鉄に関する課題を扱っているのが特徴です。

昨年は、9月13・14日に青森市において北里大学獣医学部渡辺教授のもとで32回学術集会が開催され、2日間にわたり活発な討論が行われました。さらに、学会終了後には市民公開講座も企画され、多くの市民の皆様に日常生活における鉄の重要性と、鉄の欠乏、過剰による様々な疾患に関する診断と治療の進歩が分かりやすく解説されました。青森での学会では、近年の世界的な鉄研究の進歩と、鉄過剰症に対する新規治療法の開発という新たな潮流を受け、これまでの会員ばかりでなく、多くの新しい参加者がみえられました。引き続き、この分野での基礎的および臨床的研究の進展が多くの研究者の参加により、より活性化されるものと信じています。

ところで、鉄欠乏・鉄欠乏性貧血は、本学会が鉄代謝研究会として発足した当時から一貫して追求している最重要課題です。2008年度の事業として、2004年に「鉄欠乏・鉄欠乏性貧血の予防と治療のための指針」として本学会から発行された第一版の改訂が企画され、3月31日に改訂版を完成させることが出来ましたので、皆様のお手元にお届けすることができます。

この事業は、鉄欠乏の診断と治療に従事していた血液学者、血液医が集まり、本学会の前身である鉄代謝研究会を発足させた時から連綿として従事している課題です。

我が国における鉄欠乏鉄欠乏性貧血の頻度は諸外国に比べても多く、社会的にも重要な課題であり、その診断・治療法の標準化と普及は我々の学会が担わなければなりません。2004年に初版を発行したのち、本学会の鉄欠乏性貧血の診断基準は、広く使われるようになり、また現在も書店への購入希望が継続してあるとのことです。

しかし、発刊から5年を経過したため、この間の鉄代謝研究の進歩をわかりやすく理解することと、鉄欠乏・鉄欠乏性貧血に対する予防・治療に関する標準的な知識の普及を目指して、改定第2版を製作することとなりました。編集委員会が立ち上がってから実質半年という比較的短期間でしたが、何とか発刊することとなりました。本書がとかく軽視されがちな鉄欠乏の診断、予防、治療の普及に役立つことを期待しています。

2009年度の第33回学術集会は、9月に木村文昭先生が倉敷で開催されます。多くの皆様の出席と活発な討論を期待しています。また、本年は2年毎に開催されていますInternational BioIron Societyのmeetingが、6月7日から9日までポルトガルのポルトで行われます。前回の京都での鉄研究の進歩がさらに大きく開いている時期であり、日本からの多くの参加が期待されています。2年に一度の鉄に関する国際的な情報交換の唯一の場であり、今後この分野で一層研究を伸ばしていかれたい方には、ぜひ参加して世界の研究動向をつかまえていただきたいと思います。

今後、本学会がより一層強固な基盤をもつ学術団体としての内容と形態を整えるように、会員の皆様のご意見をうかがいながら進んでいくこととしたいと思っておりますので、よろしくご協力ください。

日本鉄バイオサイエンス学会
代表世話人  高後 裕

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