日本学士院賞の受賞報告 2021

本学会会員が、令和03年度の日本学士院賞を受賞することになりましたので、以下報告申し上げます。

研究題目

直鎖状ユビキチン鎖の発見とその炎症応答制御に関する研究

氏名

岩井一宏(いわい かずひろ)先生

現職

京都大学大学院医学研究科長・教授

生年(年齢)

昭和34年(61歳)

専攻学科目

生化学・細胞生物学

出身地

京都市左京区

授賞理由

岩井一宏氏は、新奇な直鎖状ユビキチン鎖と特異的な生成酵素であるLUBAC(ルーバック)を発見してその機能、疾患への関与を解明しました。ユビキチンは生命現象を担う機能分子であるタンパク質を分解に導くシグナルであると考えられていましたが、岩井氏はまず、LUBACによって生成される直鎖状ユビキチン鎖がタンパク質分解ではなく、炎症応答制御をはじめとして、細胞生存などの多くの生命現象に中核的に寄与することを解明しました。さらに、直鎖状ユビキチン鎖の生成減弱が免疫不全を伴う自己炎症性症候群、その生成亢進がB細胞リンパ腫の原因となることも明らかにしました。加えて、多くの病原微生物が宿主に感染する際にはLUBACを抑制することなども判明しています。岩井氏の研究はユビキチン、免疫応答制御機構の分野に新機軸を提供したのみならず、感染症、悪性腫瘍、免疫疾患の治療など、医学に新しい可能性を提示するものです。

 

【用語解説】

直鎖状ユビキチン鎖
ユビキチンは小球状のタンパク質であり、主に数珠状に連なったユビキチン鎖として、他のタンパク質と結合してその機能を調節する。岩井氏の発見以前にはユビキチンの7個のリジン残基を介したユビキチン鎖のみが知られていた。岩井氏が発見した直鎖状ユビキチン鎖はリジン残基ではなく、N末端のメチオニンを介して形成されるユニークなユビキチン鎖である。
LUBAC(ルーバック)
直鎖状ユビキチンを生成する唯一の酵素(ユビキチンリガーゼ)。3種のタンパク質(HOIL-1L、HOIP、SHARPIN)から形成される複合体型酵素である。下図参照。
自己炎症性症候群
発熱と全身の種々の臓器の慢性炎症を呈する疾患であり、感染症や自己抗体などのリンパ球等の獲得免疫系が関与しない疾患を指す。好中球やマクロファージなどの自然免疫系の細胞の異常で発症することが多いと考えられている。
B細胞リンパ腫
リンパ球の一種であるBリンパ球ががん化した疾患である。

 

外部リンク 
2021年日本学士院受賞者一覧

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