演者:豊國 伸哉(京都大学 准教授)
アスベスト曝露に起因すると考えられる悪性中皮腫が社会的な問題となっている。
本邦においては悪性中皮腫が2025年付近まで増加の一途をたどることが予測されている。
アスベスト繊維の本体は天然の鉱物であり、工業的に主に使用されてきたものにはクリソタイル(白石綿)、クロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)の3種類がある。
鉄音量が多いクロシドライトとアモサイトがヒトにおいて発癌性の高いことが疫学的に示されてきた。
アスベスト誘発発癌のメカニズムとしてこれまでに諸説(鉄や炎症を介した活性酸素説、繊維が染色体分配に異常を誘起する説、喫煙などに起因する別の変異原性分子吸着説)があるが、どの機序が主体なのか現在まで不明である。
既にアスベストを吸引した人における発癌予防を考えるなら、その発癌機構の解明が必要である。
これまで、私たちは鉄ニトリロ三酢酸投与によるラット腎発癌をフリーラジカル発癌と位置づけ、その責任遺伝子を探索・決定してきた。
鉄・中胚葉性という観点からアスベスト発癌との共通性が高い。
本発表においては、これまでのアスベスト発癌研究を概観すると同時に今後の方向性について述べる。