神経変性疾患と鉄代謝 :抄録

演者:宮嶋 裕明(浜松医科大学 准教授)

脳内に鉄沈着を来す神経変性症のaceruloplasminemiaやneuroferritinopathyの発見を契機に脳内の鉄サイクルが解明され、中枢神経系における過剰鉄の細胞背吐が明らかとなった。

代表的な神経変性症であるアルツハイマー病、パーキンソン病などの病態形成の過程で、生理的に発現した蛋白質が鉄などの金属の存在下で重合して可溶性のオリゴマーあるいはプロトフィブリルを形成し、これがシナプスの機能障害、あるいは神経細胞死のシグナルドメインの活性化を惹起し、神経細胞の変性を引き起こすことが提唱された。

また、脊髄小脳変性症のFriedreich失調症の原因は、ミトコンドリア膜蛋白で鉄のシャペロンとして機能するFrataxinの遺伝子異常であることが分かった。

これらの神経難病の治療戦略の一環として、中枢神経系の過剰鉄に対するキレート剤、鉄代謝関連物質に作用する薬剤の開発が今後の課題である。

 

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