演者:高後 裕(旭川医科大学 教授)
鉄はヘモグロビンの構成分子で、生体鉄の多くがそのために使用される。
生体鉄代謝は、骨髄赤血球産生を調節する erythroid regulator (未開定)と、腸管からの吸収とRESからの遊離を調節する storage
regulatorにより厳密に統御されると考えられ、後者の候補分子としてhepcidinが同定された。
赤血球楽生に必要な鉄の供給には、transferrin feceptor1(TfR1)を介して血清トランスフェリン鉄を取り込む機構が主体をなし、TfR1の発現は赤芽球分化の中期から後期に著しい。
これに対応しで血清中には可溶性 transferring receptor(sTfR)出現するため、sTfRは総赤血球産生のバイオマー力となりうる。
赤芽球の鉄代謝異常では、小球性低色素性貧血を示すことが多く、原因として多いのは鉄欠乏で、炎症時の網内系への鉄貯留による炎症貧血でもそれと類似の病態が生じる。
腎性貧血における鉄代謝異常も注目される課題で、病態に応じたエリスロポイエチン製剤と同時に鉄を適正使用することが求められている。
無効造血を含む慢性骨髄不全状態では、消化管の鉄吸収の亢進と、骨髄赤血産生を代償するための長期輸血は重篤な二次性鉄過剰症を引き起こす。
過剰の鉄は Fenton反応を介したラジカル産生を促し、肝臓・心臓などの臓器不全を起こし、患者の予後を大きく左右するが、適正な鉄キレート療法により改善可能となってきている。
赤血球造血と生体鉄代謝をin vitro, in vivo で的確、安定に測定、フォローアップする体系的システムの早急な確立が求められている。