Ⅱ 鉄欠乏・鉄欠乏性貧血の診断指針
1.鉄欠乏・鉄欠乏性貧血の疫学・症状(1)
鉄欠乏・鉄欠乏性貧血の疫学
日本人の貧血の頻度は,定期的に厚生労働省が行っている『国民健康・栄養調査報告』から概略を知ることができる。
表Ⅱ-1-1は 2019年度の調査結果からヘモグロビン値のデータをまとめたものである。

男性ヘモグロビン値13.0g/dL 未満,女性12.0g/dL 未満を貧血としてデータを眺めてみると1),貧血の頻度は30〜40歳台の成人女性の10〜20% を占める。
また,男性および女性ともに 70歳以降で増加を示す。この結果は,過去の横断研究で,Kusumiらの 2002 〜 2005 年の首都圏の女性 13,147 人のうち,12.0g/dL 未満が 17.3%(50 歳以下に限ると22.3%)を占めたとする報告と一致している2)。
Hayashiの1989〜2003年の20歳以上の女性50,967人の解析や3),国民健康・栄養調査1996〜2003年の女性の貧血の頻度は増加傾向であった(『鉄剤の適正使用による貧血治療指針 改訂第3版』)4)。
しかしながら,表Ⅱ-1-2 に示した2000年以降の貧血の頻度の推移を見ると,女性の貧血の頻度は,2003年までは増加傾向にあったが,2003年以降は各年齢層において減少傾向にある。
